Memories of Ed Yourdon

Yourdon先生亡くなる

ソフトウェア工学の巨人、Ed Yourdon先生が亡くなりました(The New York Times on Jan. 22, 2016)。構造化設計の基礎を作り、アジャイルに影響を与え、晩年は写真を愛していたようです(写真は、彼のFlickerのサイト  より)。

Ed Yourdon_Flickr

ソフトウェアづくりで変わらないこと

少し前になりますが、下のスライドを見つけて、日本語訳を申し出ました。ソフトウェア工学がいったり来たりしながらアジャイルに向かって行く様子、その中で変わっていないもの、について簡潔にまとまっていると思います(以下は当時の私のブログより)。

先日、尊敬するエドワード・ヨードン博士が「Top 10 Software Engineering Concept」という文書の公開した、とtwitter でつぶやいていたので、「訳してもいいですか?」と聞いて、5分でOKをもらった。なんというインターネット時代だろう!

ヨードン博士の動機は、

ソフトウェア工学の大切な考え方は、そんなに昔から変わっていないんだ。新しい世代は、すごいよ、学生はみんなIMで会話して、Facebookで繋がっている。COBOLプログラマがまだ存在しているなんてことは知らないんだ。でも、ソフトウェア工学の大事なことは、なんども新しい世代が、同じ事実を発見し、過去の重要な論文や書籍にぶち当たる。ここで10個上げて、フリー文書にしておくので、共有したい。また、勝手に変更してもいい文書にしておく。

というものだ。内容は、工学とアジャイルのバランスになっているし、ソフトウェアは技術が中心課題でなく、文化なんだ、人なんだ、ソーシャルな、ことなんだ、ということを再度思い出させてくれる。

ソフトウェアの中で「人」について

もう一つのエピソード。

「どうしてソフトウェア開発の人系の視点(people side)が、アジャイルという言葉で発見されるのにこんなにも時間がかかったのか。」

というディスカッションの中で「変化させないように前行程に時間を使う事が大切だ」という妄想があったのは、すべて、あのバリーベームのあの有名な「変更コストが指数的右肩上がりになる」という絵のせいだ、と(冗談めかして)暴いたという話も(以下は当時の私のブログより)。

KONICA MINOLTA DIGITAL CAMERA2007年5月ICSEで、ぼくらの世代にとてっての「ソフトウェア開発の先生」たちが集まったパネルディスカッションがミネアポリスにて開催されていた。参加者は、Fred Brooks, Jr., Tom DeMarco、Barry Boehm、Linda Rising、Tim Lister, Ed Yourdon. パネルの中で、

「どうしてソフトウェア開発の人系の視点(people side)が、アジャイルという言葉で発見されるのにこんなにも時間がかかったのか。」

という質問があった。すると、Tom DeMarco がマイクをつかみ、

Tom 「それは、すべて Barry Boehm の責任なんだ。」

といい始めた。Barryはここで目を丸くしたらしい。

Tom 「Barryのあの曲線、ソフトウェアの修正コスト曲線が発表されたおかげで、みんな要求をはじめにちゃんと決めないと、という洗脳にあったんだ」

Costofdefectremoval

Barry 「そうだ、Tomは正しい。その時代ぼくがいたドメインでは、要求を決めることができたんだ。だから要求を先に決めることは理にかなっていた。でも、80年以降は変化が大きくて、そんなことはなくなってしまった。要求は変化する。先にすべて決めるなんて無理だ。今ではみんながこの指数関数のように変更のコストが高くなる、というグラフに洗脳されてしまって、すべてを先に決めないといけない、と思っている。そして、みんなのその固定観念をを変えること自体を難しくしてしまったからだ。」

この話をしらべてみると、この件に関して同席していたEd Yourdonがブログを書いていた。BarryとWinston Royce(ウォーターフォールの元祖)との関係なんかもわかって、よい記事だった。

上記のEdのブログはとてもいいです。”Retrospecitves on Peopleware” というパネルディスカッションの話。

ソフトウェア工学の分岐点における、アジャイルの役割

最後に、これも少し前ですが、第30回記念のソフトウェアシンポジウムで、「ソフトウェア工学の分岐点における、アジャイルの役割」 と題した発表をしました。

ソフトウェア工学、は衰退したのか、滅びるのか?あるいは、これからなのか?

1968年にNATO会議で初めて使われたSoftoware Engineeringという言葉。この言葉は、2010年の現在、どう響くのか、という点を、エド・ヨードン、トム・デマルコ、トム・ギルブ、アリスタ・コバーン、メアリ・ポペンディック、ら過去のソフトウェア工学のジャイアンツの最近の発言と、その中でのアジャイルの台頭という観点で、書いてみました。

すべて少し昔の話題を扱っていますが、ソフトウェアをよく作ろう、という活動の中にずっといらっしゃったEd先生と巨人の方々の知恵が、アジャイル開発の中には流れていることがわかると思います。

私は、過去から学ぶこと、そして、自分たちのやり方を作っていくこと。両方大事なんだ、と信じています。

Ed Yourdon 先生たくさんの知恵と愛をありがとうございました。Rest In Peace…

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