What is Enterprise Agile (1)

「エンタープライズアジャイル」という言葉を良く聞くようになりました。「エンタープライズアジャイル勉強会」でぼくが発表した資料と内容を、講演録として公開します。

一回目は、「エンタープライズアジャイル」という言葉のぼくなりの位置づけとアジャイルの歴史復習です。

「エンタープライズアジャイル」から何を連想するか?

最初に2つの写真を見て頂きます。エンタープライズというと何か左側のイメージじゃないですか。これは多分ニューヨークのマンハッタンですね。ところが、アジャイルって最初皆さん多分受け取った印象は、多分もうちょっと違う、こういうこうかっちりしたものじゃなくて、手作り感があふれた少人数のチームで、何かいいものを作る、みんなで協力して。イメージ的には多分右側のムード的なものじゃないかと思うんです。こういう自然と調和したり、小さいんだけど美しい外観を持って機能的なシンプルの美というのが多分最初のアジャイルの原形にはあると思います。

よく「アジャイルをエンタープライズ適用」にというときに、「木造建築の技術でビルを造れるのか」といわれるんです。本当にそれができるのだろうかと。そもそもアジャイルをそのまま持って行って、ここで使われている技術を持って行って、多分これはできないですよね。この関係はどうなのかと。そもそも建築というメタファーでもいいのかどうか分からないんですけども。ところがどんないいビルディングでも、実際の建設現場に立たれている、皆さんたくさんいらっしゃると思うんですけど、こんな実はきれいじゃなくて、大変なのです。エンタープライズといっても、実はすごく苦労されていて、しかも中で皆さん開発している人というのは多分こんな感じです。

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現場は人が支えている(出典: https://www.flickr.com/photos/dailuo/5527858164/)

エンタープライズの中に居ても頑張っている、人力で頑張っているものがすごくたくさんあるというのがソフトウエアの特徴で、「エンタープライズアジャイル」という言葉を考えたとき、ただ大規模になってきたり、企業ワイドでアジャイルを考えるということではないと思っています。やっぱり人の問題が中心にある。先ほどの2つの写真、どちらも「人が人のために作っている」ことはホントです。作る現場の人がいて、住む人がいる。

ソフトウェア開発をやるときに、そこを外してはいけないと常々思っています。

今日のアジェンダですが、アジャイル20xxというカンファレンスが毎年あります。その中からエンタープライズアジャイルに関する所を抜き出したので、ちょっと皆さんと共有して、今エンタープライズアジャイルといったときに、どういうことが話題になっているかというのを、まずご紹介をしたいと思います。その後で、SAFeとDAD, LeSS, Nexusというのがエンタープライズアジャイルのフレームワークとしてよく最近紹介されるので、それらをかいつまんでお話をして、最後に日本でどう考えていくんだろうかということを、お話したいと思います。

アジャイルの系譜と現在位置

きょうのお話は、まず、アジャイルの現在位置というのをちょっと復習したいと思います。
AgileWhole

アジャイルという言葉ができたのは、皆さんもここに来られている方は恐らくよく知っていると思いますが、2001年にユタ州のスノーバードという所でアジャイル宣言というのが書かれているんです。アジャイルという言葉はもともと存在していなくて、その前には、エクストリーム・プログラミング(Extreme Programming)、それからスクラム(Scrum)、これらは90年代後半に出てきた手法です。それからもう少し前にはEvoという、これは欧州でトム・ギルブ(Tom Gilb)が恐らく一番最初にアジャイルのメソッドとして提唱されたものです。それからFDD(Feature Driven Development)、アリスタ・コバーン(Alistair Cockburn)のクリスタル・クリア(Crystal Clear)、それから、DSDM、これコンソーシアムでイギリス発祥です。それからASD(Adaptive Software Deveopment)は後に『アジャイルプロジェクトマネジメント』を書いたジム・ハイスミス(Jim Highsmith)さんの考え方です。こんな方たちがスノーバードに集まって、「アジャイル」(Agile)という言葉を作ったということになっています。

実はこの間、光栄なことにAgileRoots というカンファレンスで基調講演を頼まれ、ユタ州に行く機会があって、スノーバードに行ってきました。ホテルに入って、「どこですか、その会議室は」みたいに聞いて。歴史的な場所なんです、2001年。アジャイルという言葉はもともと具体的な手法ではなく、単なるアンブレラワードで、いろんな手法を束ねた抽象概念を表現する言葉になっています。

99年にXPの本が出た辺りからぼくはずっとこの領域を観察していますので、このアジャイル運動の歴史の中での話題をいくつかピックアップします。この途中からリーンソフトウエア開発という、メアリーポッペンディーク(Mary Poppendieck)さんという、迫力のあるお姉さんが居ます。その方はTPS(トヨタ生産方式)の造詣も深く、その方がリーンという言葉とアジャイルを結び付けたというのは、すごく大きなインパクトがありました。そのおかげで、ビジネスや経営の言葉でも、アジャイルというのはとらえやすくなった。リーンの言葉で語れるようになったというのは、実は大きな変化かなと思います。

それから、歴史をたどると、この「リーン」というの言葉はもちろんTPSが出自です。TPSは実はデミング(Deming)さんが貢献しています。アメリカの方ですけど、日本で一番貢献したといっていいでしょう。デミング賞って日本にあります。そこからリーンという言葉になり、スクラムにも影響しています。XPはソフトウェアパターン運動から来ていますが、XPの第2版にはTPSという章があったり、非常に歴史的には面白いです。これらの考え方は密接に結びついて、こういう流れになっています。ところで、リーンという言葉とアジャイルという言葉、ほとんど今融合しています。僕が海外に出掛けると、リーンカンファレンスという名前とアジャイルカンファレンスってほぼ同義語に今なっています。

その後、結局何が今議論なっているか。大規模化はどうするんだとか、分散チームどうするんだとか。企業全体がアジャイルを取り入れたときに、どう上層部まで含めて変わるのか、予算システムどうするんだとか、組織改革どうするんだとかが話題になってきました。

それから、アジャイルというのとUX(ユーザーエクスペリエンス)の辺りをどうつなぐのかというのもよく議論になります。最近特に「サービスデザイン指向」、それから「デザイン思考」(Design Thinking)という言葉も非常によく使われています。アジャイルに、ユーザによい体験をどう届けるかという話、この辺りが興味の対象になっています。

「カンバン」というリーンに一番近いとアジャイル手法が、デイビッド・アンダーセン(David Andersen)という人が書いた本ですけども、出てきたり、これ昨年日本語訳されました。それから世界的に大きなインパクトは、2010年エリックリース(Eric Ries)というアメリカ西海岸のスタータップ、アントレプレナーの世界をリーンの形式で定式化して、「リーン・スタートアップ」という本を書いてい、大きな盛り上がりをみせています。アジャイルからのスピンオフの中では最も大きな事件だと考えています。

つづく…

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