
本書で紹介した行列の性質や分類をまとめた地図を示します(基礎体として実数を想定しています)。
正方、対称、直交、可逆、置換、対角、射影、対角化可能、など、多くの行列のカテゴリーがあります。以下のベン図は、それらのカテゴリーの関係を示しています。
上から下へと、図をたどりながら説明します。主要な行列の積分解と解説の章番号も示してあります。
すべての $m\times n$ 行列は $A=CR$ 分解によってランクを決定でき、また、 $A=U \Sigma V\transp$ と特異値分解できます。
内側に入って、正方行列は$m=n$の場合であり、すべての正方行列は可逆か不可逆かに分かれます。この分岐線が中央に引かれた点線です。この判定は、「 $LU$ 分解によって $U$ に零行が存在する」、「 $\det(A) \ne 0$ 」、「すべての固有値が非零」などで行えます。
可逆行列は、直交行列 $Q$ と上三角行列 $R$ の積 $A=QR$ に分解できます(グラムシュミット法)。
また、正方行列は対角化可能な場合、 $A=X \Lambda X^{-1}$ と対角行列 $\Lambda$ と可逆行列 $X$ を用いて表されます。 $S\transp = S$ を満たす対称行列は、 $Q\transp = Q^{-1}$ を満たす直交行列によって対角化可能です。
置換行列は行や列を入れ替える行列ですが、これは直交行列の仲間です。対称行列の中には正定値行列があり、すべての固有値が正で可逆です。固有値として0も認めた場合、半正定値行列と呼ばれます。射影行列はこの中にあり、 $P^2 = P = P\transp$ を満たし、その固有値は1か0です。
対称行列の中に対角行列が不可逆と可逆をまたいで伸びています。
この図の中心に単位行列 $I$ と 零行列 $O$ があります。ともに対角行列であり対称行列であり射影行列です。単位行列はさらに可逆であり、直交であり、置換であり正定値であり、すべての固有値が1で唯一の可逆な射影行列でもあります。
本書では出てきませんでしたが、対称、直交、射影、置換など、ユニタリ行列によって対角化可能な行列全体の呼び名が存在します。正規行列と呼ばれ、 $A\transp A = A A\transp$ を満たすことで特徴づけられます。
特に、実対称行列の場合は、実数の固有値と実直交行列によってスペクトル分解可能です。
この図の最下行には、すべての $A$ に対して定義できる $A^+$ という擬似逆行列が配置してあります。可逆な正方行列の場合、 $A^+ = A^{-1}$ となります。
詳しい解説(英語)はこちらです.